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適当な距離を置いて三人は座り直した。
「で,何故三津がここに居るんだい?誰が連れて来たんだい?」
重い空気を切り裂いたのは桂だった。 https://www.easycorp.com.hk/en/virtual-office
「何故ってそれは三津が間抜けだからですよ。危機感も学習能力もない。
誰が連れて来たか知ったところでこの状況は変わりませんよ?」
すらすらと出てくる三津を貶す言葉。
『吉田さん酷い…。』
それでも三津は言い返す事が出来なくて押し黙る。
「稔麿…今三津を馬鹿にしたね?
三津は悪くないだろう,勝手に土方の女と勘違いした者が悪い。」
『三津は俺のモノだって言ってるのか?』
吉田の眉間に皺が刻まれる。
言葉の節々や二人の空気から明らかに何か変化があったのは分かる。
自分のいない間に随分と状況が変わってしまっているのが面白くない。
「あの,ここ長州藩邸なんですよね?」
「そうだけど?」
おずおずと質問してきた三津に吉田の“だから何?”と言う鋭い視線が突き刺さる。
「鴨川近い?それやったら自力で帰れるとは思うんですけど…。」
「駄目,さっきも言ったけど浪士に捕まった君が無傷で逃げ帰るなんて不自然極まりない。」
それはごもっとも。三津はしょんぼり肩を落とした。
「それやったら川に突き落としてもらえません?
そしたら命からがら逃げて来た風に見えるし!」
「却下,わざわざ三津をそんな目に遭わすなんて私には出来ない。」
桂は眉を顰めて首を横に振った。
「君って子は自分を痛めつけるのが好きなの?こんな真冬に川に飛び込んでみな,心臓止まるから。」
「なんてね…。言ってみただけですから。」
呆れ顔の吉田に三津は苦笑するしかなかった。
「悪いがこればかりは私の一存でも決められない。明日何とかなるようにするから,今日は大人しくここに居てくれないか?」
桂に申し訳なさそうにされては嫌なんて言えない。
三津は首を縦に振った。
『大事にならんかったらええけど…。』
その夜は小さな部屋をあてがわれ,身張り付きで過ごす事になった。
「落ち着かないだろうけど今日はゆっくり休みなさい。」
用意された布団に正座する三津の頭を,桂は愛おしそうに撫でた。
「ありがとうございます。」
「じゃあ,おやすみ。」
「おやすみなさい……。」
部屋を後にする桂の背中をぼんやりと見つめた。三津の部屋の外には見張りが付いた。
障子の反対側に人影があるのは何とも居心地が悪かった。
それでも精神的に疲れていた三津は,うつらうつらと眠りに堕ちて行った。
『屯所の布団よりふかふかや。』
明日になれば桂や吉田によっていい方向へ転がればいいな。
そんな期待を抱いて,三津は寝息を立てた。
蝋燭の僅かな灯りが暗闇に揺らめく静寂の中。
「おい,見張り交代だ。」
「おお,ありがてぇ!」
寒い中廊下にいた藩士は交代が来た事に喜んで,そそくさと自室へ引き上げた。
それを見届けてから,交代でやって来た藩士は数人の仲間を手招いた。
中に忍び込み,真っ暗な中目を凝らしてぐっすり眠る三津を捉えた。
「敵陣でお気楽な奴だな。」
その姿が藩士達の目には憎たらしく映る。
藩士は三津に跨ると布で口を塞いだ。
「っん!!」
これには流石に目を覚ます。
すぐ目の前にある男の顔に体は強張る。
あっという間に手足を縛られ,軽々と肩に担がれた。
暴れようにも恐怖心が勝った。
来る時は意識が無かったけど,今は自分がどうなっているのかがはっきりと分かる。
誰か気付いてと願うけど,声も想いも届く事はなかった。
「ったく,いい情報聞き出せるかと思ったのにとんだ見込み違いだったなと。」