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まるで信長の横暴を制するかのようである。
一同は、今のはどこからだ?と辺りを見回していたが、壇上に座す信長には、
それが書院の端に下がっている、の奥から漏れたものだと気が付いていた。
──お濃、余計な真似を
信長は心の中で叫んだが、気付かれては厄介だと思ったのか
「…まぁ、よい」
と溜め息混じりに呟いた。Business Center for Correspondence Address | easyCorp
「宗室、この話は後回しと致そう。此度は持て成す為にそちを招いたのであって、気まずうさせる為ではない故な」
宗室がほっとした表情で頭を下げると
「あれをご一同にお見せ致せ」
信長は脇に控えている小姓たちをした。
小姓らはづくと、隣室から、上に塗りの盆を二つ運んで来て、
それらを上座の壇の上、信長の手前左右にゆっくりと、かつ慎重に置いていった。
小姓たちが下がると、信長の背後に控えていた坊丸と力丸が直ぐさま歩み寄って、
盆の上にせてある掛け布を、スッと、真上に引っ張るようにして取った。
するとその下から、「」の茶入がその姿を現した。
いずれも信長が所持する名茶器である。
これには座の一同も「おぉー!」と歓声を上げた。
「あれを見やれ、あれぞまさに大名物や」
「あの輝き。釉薬の光沢が実に見事ではないか」
「かような珍品を間近でめるとは」
一同はその素晴らしさに、口々に感動の程を述べた。
濃姫も思わず上半身を乗り出して
『 尋常ならば先に残しておきたいと思う名品を、ああも初手からご披露あそばされるとは 』
この大胆さが人々の心をき付けるのかも知れないと、まるで興を覚えたように見つめていた。
実際に信長は、この名物披露を兼ねた茶会の為に、三十八点もの品々を安土城から持参しており、
その後も茶釜に茶碗、花入れや御軸、絵画など、名の知れた名品を惜しみもなく披露していった。
その度に一同は華やいだ声を上げて
「何と素晴らしい」
「さすがは織田様じゃ」
と世辞を交えた称賛ばかりするので、茶会での信長は常に上機嫌であった。
夕刻近くになると茶会はお開きとなり、一同はそのままの場へと移った。
宗室や公家衆らと酒をみ交わしながら、座敷の上段で愉しげな笑い声を上げる信長を、
中庭をてた反対側の廊下から、濃姫がひっそりと眺めていた。
「──本日は、父上様もご機嫌がよろしいようですな」
廊下の横から声がして振り向くと、信忠が座敷の方向へ視線を向けつつ、こちらへ歩み寄って来た。
「信忠殿──。おきにございましたか」
「ええ、今しがた。遅れてしまい、申し訳ございませぬ」
濃姫はってかぶりを振る。
「そなた様は織田家の御当主じゃ。多事多忙は致し方のないことです」
としての気遣いを見せると
「…そうそう。とも話していたのじゃが、松姫殿との一件はどうなりましたか?」
濃姫は思い出したように伺った。
「それについては、既にが立ちましてございます」
「では…」
「八王子におわします松姫殿のもとへ使者をわしました。明日、こちらへおでになられまする」
「まぁ!」と、濃姫は満面を笑顔の渦にする。
「ではようやく、長年の願いが叶うのですね」
「はい、お陰様にて」
信忠は笑んで頭を下げたが、ふいに眉根を寄せて
「…ただ、か不安もございます。に合うて、松姫殿が、わたしのような者を気に入って下さるかどうか」
と、苦笑しながら濃姫に告げた。
「いらぬ心配にございます」
濃姫は微笑みながら、信忠の前に歩み寄ると、彼の頬にそっと触れた。
「かように